言葉を創り、与える仕事


 今日、日頃からお世話になっている先生に、拙著『完璧夫婦の城』を謹呈いたしました。感無量でした。

 

 そこで文章表現の話になったのです。お話を創るというのは、言葉を使う行為ですよね。そして、その言葉を創って行くこと。それは、新語を創るということではなく、文脈を使い、意図した言葉とすること。そういうことだよなぁと改めて思ったのです。ならば、作家の仕事は、言葉のないところに言葉を与えて行くことだといえます。そう思うと、作家とは何と重い責務でしょうか。

 

 「言葉のない」ところには、苦しみの声さえ上げられない人、その内、苦しんでいるのに苦しいことに無感覚になっている人が段々溜まって行きます。その状態を感じ取ってしまう。声なき声がどうしても聞こえてしまう。聞かざるを得ない。それはもう仕方がない。自分の宿命のようなもの。責務とは、そのような宿命ゆえではないかとさえ思えて来ました。